当社ブログをご購読頂き誠にありがとうございます。
今回は、アパレル業界で今最も大きな経営課題となっている物価高騰危機をテーマに執筆しております。
今後の営業戦略をご検討するうえでのご参考にして頂ければ幸いです。

物価高騰下におけるアパレル業界の現状

会議

皆さま、ご承知の通りかと存じますが、現在アパレル業界でも物価高騰が進んでいます。
それは、コロナ禍による需給バランスの変動、かねてからの原油や素材コストの増加、物流コストの増加、サプライチェーンの変化、そこに今回のウクライナ危機や円安などが影響しています。
アパレル業界大手でも、ファーストリテイリング(ユニクロ)様や、しまむら様も値上げを表明しています。
また皆さまご自身も、取引先からの値上げ要請や、また取引先への値上げ要請を進めている中にあると理解しております。

こうした経営環境下にあるアパレル業界下でありますが、昨今当社がクライアントに対してご説明している物価高騰下の営業戦略を本ブログにて公開させて頂きます。

アパレルビジネスの売上構造



 
まず、アパレルビジネスの売上構造を確認してみたいと思います。
皆様ご存知の通り、アパレル業界の売上構造は次のようになっています。

アパレル売上(小売) = 客数 × 客単価(単価 × セット率)

小売業の場合は、「客数×客単価」ですが、「客単価」は商品そのものの「単価」と「セット率」により決まります。

メーカーや商社の場合も同じで次のようになります。

アパレル売上(メーカー) = 取引先 × 取引先単価(単価 × 導入アイテム数)

このように、小売業も、メーカーも、基本的に売上構造は同じです。
また、厳密に言えば、「客数」は「新規客」、「既存客」、「既存客の来店頻度」に分解できます。

コロナ禍でのアパレル営業戦略

マスクをする女性

以上の売上構造から、これまでのコロナ禍においては、アパレルではどのような営業戦略が重要だったでしょうか。要素別に見ていくと解りやすいと思います。

アパレル売上(小売) = 客数↓ × 客単価↑(単価 × セット率↑)

まず「客数」は絶対に減少していきます。
感染症対策により人の活動や移動が大きく制約されました。

また人が集まる場が抑制されたため、人の目を意識したおしゃれやオケージョン需要が減少しました。そのため総体として客数は減少するのはやむを得ない状況でした。

インターネット販売などの「EC化」により客数を増やせばいいじゃないかという声もありましたが、中小企業がインターネット販売を行うにはコストとリスクが伴いますので、当社では基本、今インターネット販売をやっていないアパレル会社様にはお勧めはしていませんでした。

その点、下記のブログでもご紹介しております。

https://www.biz-renova.com/apparel_ec/

ただ、一方でコロナ禍にあってもファションの需要は無くなったわけではありません。

・外出の機会は減ってもファション自体が好き

・洋服を売っているお店にいくこと自体が好き

・今はできなくても外出できる時を楽しみに洋服を買いたい

こうした声を店頭でも私自身も聞く機会がありました。

そうするとコロナ禍において売上を維持するためには、「客数」を増やすよりも、そうした客層を狙い「客単価」を上げる方向となります。

「客数」のうち「単価」はコントロールしにくいので「セット率」を増やす方向となります。
「セット率」は、アパレル小売業においては、コンセプトからくるMD、VMD、また接客力などにより左右されます。

それ故、アパレル小売業では、セット率を増やすこうした施策や営業戦略を勧めていました。
またアパレルメーカー・商社では、「取引先単価(導入アイテム数)」を増やす施策や営業戦略を勧めていました。

その結果、これらに取組まれた会社様の殆どは、コロナ禍の影響をあまり受けませんでした。

さらにはこれらの施策をすすめることで、お客様の来店回数や、ご紹介なども増え、客数も上がった会社様もありました。

物価高騰下でのアパレル売上構造

お金と請求書

しかし、現在の物価高騰下では、コロナ禍において有効だった営業戦略が通用しません。

先ほどの施策は継続する必要はあるのですが、それだけでは全く足らないのです。

その理由も売上構造から説明が出来ます。

アパレル売上(小売) = 客数 × 客単価(単価↑ × セット率↓)

物価高騰下では、必然的に「単価」が上がります。

これは皆さまも日々認識しているところです。

そうすると確実に「セット率」が減少し、1名あたりの購入点数が減ります。

現に、「客単価」はそう変わっていないが、「セット率」や売れ数が昨対80%台まで落ち込んでいる会社様も確認されています。

その理由は2つあります。

一つは、消費者の食費や家賃などの生活費も高騰しているため、毎月ファッションに使える額も減少しているからです。

もう一つは、毎月ファッションに使える額は変わらなくても、「単価」自体が上昇しているので購入できる点数が限られるということです。

どちらにせよ消費者の実質的な可処分所得が低下することで「セット率」が減少します。

ラグジュアリーファションを購入する一部の富裕層を除いてはこの傾向が顕著に見られます。

一方で「客数」も「セット率」程ではありませんが緩やかに減少しています。

これはお店の絶対的な顧客数というよりも、来店頻度が落ちている場合が殆どです。

コロナ禍による行動抑制という別の要因で来店頻度が落ちていきます。

その理由は、やはり物価高騰による可処分所得の減少です。

これまで月に2回洋服のお買い物に出かけていた方が、使える金額が減ったため1回になるという現象です。

そして、「客数」と「セット率」が同時に低下するという意味では、アパレルビジネスは、コロナ禍危機よりもやっかいな危機に直面していると考えています。

物価高騰下でのアパレル営業戦略

勝ち負け 

それでは物価高騰下において、アパレルではどのような営業戦略を取ればよいのでしょうか。

「セット率」を上げる施策は、これまで通り継続する必要があります。

しかし、それだけ実行していても、先ほどの理由で「セット率」は頭打ちになります。

そうすると、「客数」を上げるしかありません。

客数のうち、「来店頻度」はほっておくと減少する傾向にあります。

また、これまで来店していない「新規顧客」の取込みも強化しなくてはなりません。

こうした「客数」を上げる営業戦略や施策へシフトするよう当社のクライアント様にはお伝えしています。

ある会社では、SNSやアプリを使用した会員登録、その中でのイベントや売場企画のご案内、お客様ご紹介特典のご案内などを大々的に行っています。

ある会社では、SNSからの新規顧客呼び込み、自店MDに入門編としての価格帯ブランドを導入し、来店頻度を増やし、段階的に顧客化し中心価格帯へ持って行く流れを作っています。

またあるメーカーでは、小売店の新規開拓を営業部全体で取組んでいます。

どの場合でも、新規顧客へのアプローチ機会を大幅に増やし、新規顧客を顧客化するための導線設計の構築に取組んでいるわけです。

特にコロナ禍においては「セット率」重視の営業戦略をとってきた会社様には大きく営業戦略をシフトする必要があると考えています。

まとめ

以上、物価高騰下において、行ってもらいたいことをご説明してきました。
具体的な営業戦略や施策は、立地環境、地域環境、主要ターゲット層(ペルソナ、イメージターゲット)、価格帯、現在の販売促進策などにより異なるかと思います。
ここでは一般的なことだけをお伝えしていますが、個別のご相談も承っております。

何かございましたらお気軽にご相談くださいませ。