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今回は、アパレルに次いでクライアントの多い、生活雑貨店・ライフスタイルショップの最前線について特集させていただきます。

生活雑貨店・ライフスタイルショップは厳密に言えば全く違う業態ですが、ここではあまり厳密に定義せず、何等かの割合で「衣・食・住」の生活雑貨を扱う業態として説明いたします。

2022年度以降 好調なアパレル(衣)に対し、陰りが見えてきた雑貨(食・住)

当社がご支援させて頂いているアパレル企業様は、2022年SSは好調な状況、2022AWも堅調に推移しています。
外部の市場データからもこうした傾向が伺えます。
コロナ禍も落ち着き、反動需要もあり、こうした状況になっているのだと考えられます。

一方で、苦戦を強いられているのが生活雑貨店、ライフスタイルショップなどの業態です。
これらの業態は当社が見る限り、コロナ禍でも大きな影響は受けず、会社や店舗によっては、コロナ前の数値を上回っている先もありました。

特に「お家需要」に関連する食品、テーブルウェア、ファブリック、インテリア、コスメ関連を扱う店舗でこうした傾向が強くありました。

コロナ禍による「お家需要」がこうした特需を生んでいたのでしょう。

しかしアパレルとは逆に2022SSあたりから業績は昨対を割り始め、2022AWも苦戦している先が多く感じられます。中にはコロナ禍前の数値に届かない会社や店舗も見え始めました。

物価高騰で商品価格が上がっていますので、見た目の売上数値よりも悪化しているというのが現在の状況です。

それではなぜ、こうした状況になっているのでしょうか。
外部環境を「需要(消費)側」と「供給(競合)側」から見ると次のことが言えます。

外部環境:需要(消費)側4つの要因

外部環境(需要側)の要因としては次の4つが考えられます。

1)「お家需要」から「外出需要」にシフト

コロナ禍による混乱もだいぶ落ち着いてきています。
それにより「お家需要」から「外出需要」にシフトしています。
具体的には旅行、レジャー、コンサート、ライブなどで、これまで我慢していた分の反動消費が起きています。

そのため、「お家需要」に対応するキッチン、テーブルウェア、インテリア、ファブリック等では売上を落としやすくなっています。半面、「外出需要」に伴うファッション、服飾雑貨、レジャーグッツなどは売上を伸ばしています。

生活雑貨店もライフスタイルショップも「お家需要」に対応する商品の割合の方が高いため、これらの背景はマイナスとして出ているのだと考えます。

2)生活雑貨品が家の中で過剰な状態

2年以上続いたコロナ禍生活ですが、消費者は自宅での生活を豊かにしようと「お家需要」に関わる商品を追加購入、買い替え購入してきました。

例えば、家族の食卓を賑やかにするため、おしゃれ家電を購入し、食器一式を買い替えています。キッチン周りも見栄えのよい高額の鍋・フライパンを購入している方が多くいます。

また、リビング周りでも、家具を買い替えたり、小さなインテリアを充実させたり、ファブリックで模様替えもしています。
つまり、リビングもキッチン周りも雑貨アイテムが飽和状態でお腹いっぱいの状態です。
特に、キッチン器物、食器、家電などは耐久期間が長いので買い替え消費が生じるのは当面先となってしまいます。
こうしたお家での事情が消費に影響しているのだと考えられます。

3)消費者の雑貨を見る目が肥えてきた

「お家需要」「巣ごもり需要」の中、消費者は様々な生活雑貨を購入しました。

インターネットでの購入も増えました。外出できず時間だけはありますので、ネットショップを渡り歩き商品を比較し見て回ります。

またレジャーや旅行などの「外出需要」が規制される中、生活雑貨店やライフスタイルショップでのショッピング自体が消費者の大きな楽しみの一つになりました。実際、コロナ禍において当社の見ている店舗ではお客様の滞在時間が伸びていました。

もちろん、緊急事態宣言やショッピングモールの休業により影響を受けた店舗もありますが、おそらく生活雑貨店、ライフスタイルショップ全般でこうした傾向にあったのだと考えられます。

その結果、消費者はコロナ禍以前よりも多く商品を目にし、解説を読み、比較購買するようになりました。そのため、見る目が肥えてきており、価格と価値のバランスに敏感になっています。そのため、これまで何となく売れていたものが売れなくなるということが起きています。

4)物価高騰による可処分所得の低下

昨今の物価高騰は消費者の家計を直撃しています。
食料品、電気・ガス。ガソリン、生活必需品の殆どが値上がりしています。
年間を通じて8万円前後、家計負担が高まっていると言われています。
それにより当然消費者の可処分所得が低下します。
これまで生活費以外に自由に使えたお金が減っているわけです。
そうすると何かを節約しなくてはなりません。

洋服やおしゃれの予算を減らす人、旅行やレジャーの予算を減らす人、外食の予算を減らす人、おしゃれな生活雑貨に費やす予算を減らす人。何を減らすかは消費者の価値観や生活感にもよりますが、ファッションや生活雑貨が対象になる可能性は高くあります。

これも現在の消費傾向に影響していると考えられます。

外部環境:供給(競合)側の2つの要因

「お家需要」「巣ごもり需要」など、需要が増えれば、そこに群がるのが競合の新規参入です。
コロナ禍を通じて次の2つの業態が生活雑貨・ライフスタイルショップ市場に参入してきています。
特にショッピングセンターでは、コロナ禍で苦しくなり撤退したアパレルの後にこうした業態が出店しています。
近隣のショッピングセンターやモールを見て頂ければ実感できるはずです。

1)専門店の出店攻勢

「衣・食・住」のうち、単一のカテゴリー、また単一の中分類のみを扱う専門店です。
店舗面積としては20~40坪の店舗をよく見かけます。
特に、「食」に関わる専門店の出店が顕著です。
例えば食品を扱う専門店、食器のみを扱う食器専門店、キッチン雑貨、キッチン器物のみを扱う専門店。
ショッピングセンターや駅ビルにこうした小売店の出店が目立っています。

2)ファストファッション型ライフスタイルショップの参入

「衣・食・住」で、複合カテゴリーを扱うライフスタイルショップの出店が目立ちます。

これまでライフスタイルショップと言えばセレクト品を中心に比較的単価の高い価格帯を扱う形態が中心でした。価格に見合う質やデザインの良い商品をセレクトし、一つのライフスタイル提案として展開していました。

しかし最近目にするのはローコスト型のライフスタイルショップです。
商品もセレクトではなく、OEM中心でデザインやティストも統一され、価格も驚くほど安価で高品質です。以前から安価で高品質な生活雑貨を扱う300円均一ショップなどの形態はありましたが、そことの違いは店舗面積も100坪以上ある大型店であることです。

こうした業態の店舗が各地のショッピングセンターに出店しています。
コロナ禍で苦戦し撤退したアパレルの代わりに出店している場合もあります。

こうしたビジネスモデルから、アパレルでいうファストファッションのライフスタイルショップ版と言えるのではないかと考えています。
このようなローコスト型のライフスタイルショップに、各業種からの参入が見られます。

一例を上げていきますと

アパレル業界からの参入ではアダストリアが展開する「LAKOLE」。

「衣服、生活雑貨など、あたりまえとなっている日用品だからこそ、もっと手軽に、もっと素敵にしていきたいと考えています(同社ホームページより)」というコンセプトのもと、スタイルを統一したデザイン性の高いレディース、メンズ服、ファブリック、食卓キッチン周りの日常雑貨をロープライスで品揃えしています。
こうした店舗を、ショッピングセンターを中心に全国で47店舗展開しています。

次は「100円均一ショップ」のダイソーが展開する「standard products」。
「普段の⽣活で使う、⽇⽤品をちょっと楽しく。そんな思いを込めて⽣まれた、Standard Products。使いやすさはもちろん、環境に配慮した素材など、私たちだから出来る感動価格、感動品質でお届けします(同社ホームページより)」というコンセプトのもと、ショッピングセンターやショッピングビルを中心に22店舗展開されています。

洋服こそ扱っていないものの、キッチン雑貨、テーブルウェア、ファブリックの商品が豊富です。
何よりも特徴的なのは、新潟燕市のカトラリー、今治産タオル、瀬戸焼食器、岐阜関市の包丁といった国内産地の雑貨が300円~というロープライスで品揃えしているところです。

デザイン性や品質も100均一とは比べものにならない内容で、一つ一つ大きなPOPを使い丁寧に説明されています。
また環境やSDGsに配慮した素材の商品も多く見かけます。
コンセプトの「感動価格、感動品質」は売場に行けば実感できる内容でした。

次は、ホームセンターのカインズが展開する「Style Factory」。
「よりよく暮らす、毎日のスタイルをつくる」をコンセプトに、首都圏のショッピングセンターに5店舗を展開。

品揃えは、インテリア、寝具、DIY用品、キッチン雑貨、ペット用品が中心で、ホームセンターで培った品揃えのノウハウに、ライフスタイルショップとしてのスタイルの統一性を加え、やはりロープライスとなっています。

中には、これら「LAKOLE」「standard products」「Style Factory」の3店舗が同時期に出展している地域(神奈川県海老名市、ららぽーと海老名、ビナウォーク)もあり、専門店、ローコスト型の大型ライフスタイルショップが熾烈な競争を行っている地域もあります。

物価高騰が言われる中、こうしたローコスト型のライフスタイルショップが雑貨市場のシェアをじわじわと広げているように感じます。
こうした動きは今後、地方にも更に波及していくと考えられます。

また、こうした中、既存の生活雑貨店でも動きがあります。
雑貨店大手の東急ハンズは、カインズに買収(M&A)されました。
その理由の一つに東急ハンズ側の業績不調があったと言われています。
こうした市場の動きと無関係ではないと考えます。

生活雑貨店・ライフスタイルショップが今やるべきこと

分岐点
以上、市場環境、競争環境ともかつてないほど厳しい状況に置かれているのが生活雑貨店、ライフスタイルショップです。

先ほど説明しました通り、需要(消費)が縮小する中、供給(競合)側からの参入も進んでいます。
少ないパイを取り合う状況ですので厳しくなるのは当然です。

またそれに拍車をかけているのが、既存の生活雑貨店、ライフスタイルショップ側の内部事情です。
コロナ禍では「お家需要」「巣籠消費」で業績は好調でした。
そのため業務は多忙となり目の前の仕事に追われます。

一方で生活雑貨店やライフスタイルショップにとって重要なメーカー開拓、商品開拓などが疎かになりがちでした。
コロナ禍で展示会、出張に行くことが出来なかったのもそれを助長しています。

そうした中、大手の競合先が着実に出店準備を進め、コロナ禍が落ち着き、気が付けば、市場が変わり、強力なライバルも出現していたというのが現在の状況と考えます。

生活雑貨店・ライフスタイルショップは扱うカテゴリーも多く、アパレルよりも繊細なMD計画、販売計画の運用が求められます。

しかし逆を言えばアパレルよりも、品揃え、販売方法の面で、やれる施策の幅が広いのも特徴です。
そのため、各社ごとにその戦略は異なるはずですが、これまで通りのやり方では生き残れないのは間違いないでしょう。

当社は「アパレル経営を強くすることでファションが楽しい社会を創ること」を事業目的としています。
生活雑貨やライフスタイルもファションの一部だと考えています。
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