スポーツチームに見る、組織論、経営論

当社ブログをご購読頂き誠にありがとうございます。

今回は、オリンピック女子バスケットチームに学ぶ「経営と組織」というテーマでブログを投稿させて頂きます。

なぜこうしたブログを執筆したかと言いますと、今回銀メダルを獲得した日本女子バスケットチームには「経営と組織」を考えるうえで重要なポイントが多く含まれているからです。

「経営と組織」がテーマですので、アパレル以外の業種の会社様にもご購読して頂いても参考になるかと思います。

今回は少々長い説明となりますので、重要ポイントを3部に分けご説明してまいります。

今回は1部についてご説明いたします。2、3部は9月号のブログにてご説明させて頂きます。

1部)「個に依存せず」組織で戦う ~「個に依存しない」から「個が活きる」~

2部)役割定義とチームワーク ~役割定義で連携を実現~ (仮称)

3部)持続的な組織とは ~社内対立、社内トラブル、離職の少ない組織~ (仮称)

特に次の3つの組織的な傾向がみられる会社様、経営者様に読んで頂けると何かの「気づき」に繋がるのではないかと考えています。

1)業務や権限が特定の方に集中し、「個に依存する」組織

2)役割定義が曖昧で、連携できない組織

3)社内対立や社内トラブルが多く定着率が低い組織

本ブログを公開する頃には東京2020オリンピックは閉会していますが、大変な時期でのオリンピック開催でした。選手団、大会関係者には心からエールを送りたいと思います。

日本女子バスケットチームの活躍

さて、東京2020オリンピックでは日本男子バスケ、日本女子バスケの試合を応援していました。

その中でも特に印象に残り感動したのが日本女子バスケットチームの準決勝フランスとの試合でありました。

準準決勝でも強豪ベルギーに対しラスト16秒の3Pシュートで大逆転勝利を収めていました。

準決勝でも世界ランキング5位のフランスに対し、「日本87-フランス71」で勝利を収めました。

世界ランキング10位の日本が強豪フランスに勝利するとは誰も予測していなかったと思います。

残念ながら、決勝戦でのアメリカとの試合には敗れてしまいました。

それでも決勝戦も素晴らしい試合で見ている者を勇気づけてくれました。

世界ランキング1位、オリンピック6連続金メダルの絶対王者のチームに15点差「日本75-アメリカ90」ですので素晴らしい結果だったと思います。

それでは、準決勝のフランス戦が、なぜ印象に残った試合だったのかをご説明します。

それは個々の選手の技量ではなくチームプレーで勝利しているからです。

ホーバス監督も「このチームにキーマンはいないし、スーパースターもいない。全員がステップアップしないといけないし、いちばんいい形のチームプレーをしたい」と言っています。

事実、日本チームは女子バスケ界のエース選手である渡嘉敷来夢選手を怪我で欠いてのチーム編成となっています。

以下、フランスとの準決勝の試合内容について少しご説明させて頂きます。

個々のプレイとチームのプレイ

強豪フランスに大差をつけ勝利した日本チームですが、第1Qは決して楽な展開ではありませんでした。

序盤、日本チームの連携が悪く、個人の選手の動きもぎくしゃくしていました。

対してフランスは個人技術の高さとフィジカル差を活かし攻勢をしかけてきます。

第1Qでは日本選手がシュートを打っても入らず、逆にフランス選手のシュートがスパスパ入ります。

この時点では圧倒的な技術差が出ており、試合開始直後一時は10点以上差をつけられ、私も「もう無理かな」と思っていました。

結果、第1Qは「日本14-フランス22」と勝ち越されてしまいました。

しかし動きが変わってきたのは第2Qからでした。

タイムアウト時間にホーバス監督に檄を飛ばされ、そこから何かが変わったようでした。

チームの連携が良くなり、個々の選手の動きも徐々に良くなりました。

ここから地味に点数を積み重ねていきますが、チームの連携が良くなると中盤から個々の選手のスーパプレイが生まれてきます。

ポイントガード町田選手はオリンピック新記録の1試合18アシストを決め、倒れながらのレイアップシュートも素晴らしかったです。

他の選手もこれまで入らなかった3Pシュートが決まりはじめます。

第2Qは完全に日本チームに流れが移り結果、「日本27-フランス12」と勝ち越します。

そしてこの流れは第3Qでも変わりません。

チームの連携も安定し、個々の選手のスーパプレイも続きます。

しかも、途中交代の選手も交代直後に3Pを決めるなど、これまでベンチにいた選手まで良い活躍をします。

日本ベンチの方を見ても皆良い顔をしており、チームの状態の良さが伺えます。

まさにベンチを含めて全員で戦っているように見えました。

結果、第3Qも「日本27-フランス16」と勝ち越します。

対して、第2Q、第3Qのフランスの方はというと完全に試合の流れを持っていかれ、チームの連携も上手くかみ合いません。

個々の選手の技術力で得点するも、シュートの精度も落ちてきていました。

外れたシュートは日本選手にリバウンドされてしまいます。

チームの連携が悪くなると個々の選手のレスポンスも悪くなってくように見えます。

ベンチの様子もまるでお葬式状態でした。

監督含めベンチスタッフも深刻な顔つきとなっています。

痺れを切らした監督は第2Q途中に選手5名の総入れ替えを行いますがそれでも上手く歯車が合いません。

交代選手が直ぐに結果を残す日本とは対照的でした。

ファールをとられ活躍出来ずにベンチ入りした選手は泣きそうな顔をしています。

コートの選手もベンチの選手、スタッフも完全に勝てるチームの状態とは言えなくなっていました。

こうした日本チーム、フランスチームの状態を見ていた私有馬も、この段階で日本チームの勝利を確信していました。

そして、第4Qに入りフランスも必死の猛攻を仕掛けてきます。

さすが世界ランキング5位のチームですので猛攻は凄まじいものがありました。

この猛攻に対し、一時試合の流れが変わりそうな局面もありましたが、ホーバス監督はタイムアウトとり選手を怒鳴りつけ檄を入れていきます。

ラスト2分を切り20点差があるにも関わらずこうしたことをするわけであります。

そしてまた日本選手の動きが変わります。

技術力に勝るフランス選手の必死の猛攻に対し、ここまでくれば気合の勝負といった感じで日本側も必死のディフェンスとリバウンドで抵抗します。

そして、ついにフランス側のチームファールが5を超えていきます。

バスケットではチームファールが5を超えると以後ファール毎に相手にフリースローが与えられます。

これも地味に効いてきました。

こうして第4Qはフランスの猛攻にさらされながらも「日本19-フランス21」で終わり、結果として大差をつけ勝利しました。

試合後の集合写真でも選手の皆さまは非常に良い顔をしていました。

決勝戦のアメリカ戦でも非常に良い顔で戦っていました。

ある選手は「とても楽しく試合が出来た」と言っておりました。

楽しみながら笑顔で勝利出来ているわけであります。

さて、ここからが今回のブログの本題となります。

なぜ日本女子バスケットチームは歴史的な快挙を遂げたのでしょうか。

そこには個人の技術やフィジカル面だけではなく、組織運営、チーム運営上の要因があるように考えます。今回はそうした組織的な要因にフォーカスして説明していきます。

以下、3つの視点から説明していきたいと思います。

1部「個に依存せず」組織で戦う ~「個に依存しない」から「個が活きる」~

さて、今回は組織やチームにおける組織運営について日本女子バスケットチームを事例にご説明していきます。

バスケットに関わらず、快進撃を遂げるチームにはある特徴があります。

プロ野球などの優勝チームにも良くある傾向です。

それは、試合ごとに「活躍する選手が変わる」ということです。

プロ野球でも、優勝する勢いのあるチームでは、試合ごとにMVP選手が変わります。

プロ野球をご覧の方はご経験があるかと思います。

今回の日本女子バスケットチームでも、準々決勝のベルギー戦ではラスト15秒で3Pシュートを決め大逆転を実現した林選手、準決勝では18アシストを決めた町田選手、決勝戦でも交代早々から3連続3Pシュートを決めた本橋選手とMVPと言える活躍をする選手が都度変わっています。

スポーツ的に言えば、選手層の厚さ、選手のその日の調子、相手チームとの相性などが言われますが、私の立場からすると組織的な要因が大きいと考えています。

例えばですが、次のようなチームがあったとします。

攻守に長けたスーパエースが1名いて、並の選手4名のいるチームです。

いわゆる「個に依存した」チームです。

圧倒的なスーパエースは、ドリブル、シュート、ディフェンス、リバウンドも完璧だったとします。得点もディフェンスもこのスーパエースが中心となっています。

さて、こうしたチームがあったとして強いチームと言えるでしょうか。

このスーパエースの技量にもよりますが、ある程度のところまでは勝つことが出来ると思います。

しかし、ある一定の強さの対戦相手になっていくと勝率を大きく落としていくことになるはずです。

その理由は簡単です。

特定の「個に依存する」チームは相手チームからすれば戦いやすくなります。

なぜなら特定の「個」を潰す戦略をとればいいからです。

またバスケは5名(ベンチ含めると12名)で戦うスポーツです。

どんなに優秀な選手でも、個々の選手の技術力は高くなくても連携の取れたチームにはかなわないでしょう。

そのため特定の選手の力量、「個に依存する」する戦いはいずれ限界が生じます。

つまり、「個に依存する」組織やチームは、その特定の「個」以上に成長出来なくなるわけです。

それ故、ホーバス監督も「このチームにキーマンはいないし、スーパースターもいない」と言っているわけであります。

しかし現場での監督の采配としては難しい局面もあるかと思います。

準決勝のフランス戦では絶好調の町田選手(ポイントガード)を第4Qで宮崎選手に交代しました。

町田選手の動きを見ていると私からも「このまま続行」しても良いようにも見えました。

しかしあえて大事な第4Qで宮崎選手に交代させたのには意味があると思います。

それは決勝戦に向け「全員で戦う」ことを明示したのだと思います。

そして、交代で入った宮崎選手も持ち味のスピードを活かし良い活躍をします。

大活躍の町田選手に気負いすることなくポイントガードとしてチームを引っ張っていきます。

そして、これは必死の攻勢を仕掛けるフランスチームを困惑させていきます。

同じポイントガードでも宮崎選手の動きが全く違うからです。

必死の攻勢を仕掛け得点を得ながらも、ポイントガードの起点が変わったことで得点を許し、必死の攻勢をしながらも得点を許すという形となっていました。

結果、第4Qは「日本19-フランス21」という結果となりました。

ここで言えるのは、「個に依存しない」ことが、逆に「個を活かす」ことになるということです。

ここに組織論、チーム運営の、ある意味ジレンマがあるわけです。

PCを凝視する専門家

ここで話を実際の「経営と組織」に戻していきます。

私(有馬)が見てきた限り、実に多くの会社様が「個に依存した」経営をしております。

それは、現場階層、経営(マネジメント)階層でも言えることであります。

この傾向はアパレル業種でも、それ以外の業種の会社でも同じだと考えます。

例えば現場階層では

・特定のデザイナーに依存したアパレルメーカー

・特定の営業マンの数値に依存したアパレルメーカー

・特定の店舗や販売スタッフに依存したアパレルセレクトショップ

こうした会社様が実に多いわけであります。

また、こうした「個に依存した」状態で、その「個」が退職すると、会社全体の業績にも影響を与えていきます。

例えば

・特定の店長やバイヤーが辞めると店舗を維持できない

・特定の営業マンが辞めると取引先を失う

・特定の販売員スタッフが辞めると予算をクリアできない

こうした事例が実に多いわけであります。

さらに深刻なのは、次のように経営(マネジメント)階層で「個に依存した」組織である場合です。

例えば経営レベルでは

・カリスマ社長に支えられている組織

・特定の役員、本部長などに依存した組織

・特定の役員、本部長などに業務や権限が集中している組織

カリスマ的経営者の「個に依存した」組織は、その経営者がいなくなれば存続できません。

カリスマ社長がブランドデザイナーを兼ねている会社の場合、その社長がいなくなればブランドは維持できないでしょう。

こうした状況であると、その会社はM&A市場で売ることは出来なくなります。

また、本部長、ゼネラルマネージャー等の管理職で「個に依存した」組織である場合も深刻です。

経営者としては次の幹部候補を育てるつもりがその管理職に依存してしまっているケースをよく見かけます。

管理職で「個に依存した」場合、会社の将来、成長性は、その管理職の「個の力量」に規定されます。

優秀な管理職であれば会社もある一定のところまでは成長できますが、それ以上は伸びません。

逆に、力量が不足する管理職であれば業績低迷から抜け出せなくなります。

つまり、管理職がボトルネックとなり会社や事業の未来を左右するわけです。

こうした事例を見るのも実に多いわけであります。

そして、こうした「個に依存した」組織の場合、業績に影響を与えるだけではありません。

また別の問題を生じていきます。

それは、特定の「個」以外の「個」の成長や活躍の場を奪っていくということです。

先ほどの日本女子バスケットチームでは、試合ごとに活躍する選手が変わるということがありました。

出場チャンスが与えられるから活躍する場があるわけです。

またそうした機会や経験を得て成長していくわけであります。

この点も、実際の実務や経営の場で見かける場合があります。

例えば現場階層では

・全て自分でこなそうとする店長

・まだ無理だからといって後輩にチャンスを与えない先輩

・自分の業務範囲を広げて抱える担当者

こちらも実に良く見かけるケースとなります。

また、経営(マネジメント)層でも

・仕事を任され業務量が多くなるが、他者に任せることが出来ないマネージャー

・他者の悪いところばかり目に付き同じ管理職を育てることができない本部長

こうしたケースもよく見かけるわけであります。

いずれの場合も、「個」としては優秀な方がこうした事態に陥りやすい傾向にあります。

こうした組織やチームは、人を育てられず、次に活躍するプレーヤーやリーダーが生まれていきません。

先ほどの日本女子バスケットチームのように試合ごとに活躍する方が変わるということが起きません。活躍するのは常に同じ方々となります。

そうなると会社の成長もそこで止まるわけです。

成長が止まるだけなら良いのですが、特定の「個」が退職していくと全体の戦力も低下していきます。

なぜなら次に活躍する方が育っていないからです。

退屈な会議

そうした組織では今後の成長や活躍が期待される20~30代のスタッフが辞めていきます。

そうなると成長が止まるどころか、会社は衰退していきます。

こうした会社も実際に見るところであります。

こうした事例を実に多く見るからこそ、日本女子バスケットチームのチーム運営は経営の組織論としても参考になるわけであります。

それでは「個に依存する」組織を脱却し、日本女子バスケットチームのようにチームプレーで戦える組織を作るためにはどうしたらよいでしょうか。

それは次回の、役割定義とチームワーク ~役割定義で連携を実現~(仮称)にてご説明したいと思います。

また当社の「アパレルFDCA経営🄬」でもアパレル業界での組織設計について解説しています。詳しくはこちらをご覧くださいませ。

https://www.biz-renova.com/apa/

当社はアパレル・ファッションビジネス経営を強くすることで、「ファッションが楽しい社会を創る」ことをコンサルティング事業の目的としています。

今回のブログが貴社のアパレル・ファッションビジネス経営にお役にたてれば光栄です。